ホームページ登山(八ヶ尾山から鋸山)
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ずっと以前に、兵庫県と京都府の境界にある櫃ヶ岳に登ったとき、その麓から眺めた隣の山に岩峰が見え、あの山にも登ってみたいと思った。地図によれば雨石山らしい。機会がないままに月日は過ぎて、先日、ひょんなことから登ることができた。
そもそものきっかけは桜である。国道173号線の篠山市福住と板坂峠(兵庫県と京都府の境)の間に桜並木のある区間がある。道は西側にある川に沿って走っているが、その川の道路側の岸に植えられた桜が壁のように続いている。桜並木は2km弱程もあって、車で通り過ぎるだけでも十分楽しめる。この桜並木がどう呼ばれているかが知りたくて、その辺りの地名である小田中をインターネットで検索すると、八ヶ尾山についてのホームページが出てきた。
桜並木の北の端は筱見への入口で、筱見四十八滝から西へ多紀アルプス縦走路というのがあり、はるか昔に三岳までたどったことがある。八ヶ尾山はその稜線を逆に東へ行ったところにあるらしい。地図で見ると、173号線をはさんで雨石山の反対側にある山である。小田中の少し北の小原から入るルートが分かりやすいとホームページにあった。
年度末セールスでトレッキングシューズを買った。十何年来履いている登山靴(トレッキングシューズなんて、しゃれた名前ではなかった頃買った)は、ビブラム底が磨り減ってしまっていた。一度張り替えているのでまたそうしてもいいのだが、小さめなのか下りでつま先を痛めることがあり、愛着はあったがお役ご免にした。新しい靴は履き心地はよさそうだ。ただし、ミッドソールのウレタンが加水分解による劣化で3〜5年しかもたないという説明を受けた。何という靴だ、どんどん使わなければ。
そこで、2006年4月18日に八ヶ尾山に登った。ツツジの咲き始めた急傾斜を登り、登山口から50分ほどで頂上に着く。頂上は広い範囲で木が切られ、よい眺望が得られている。西に小金ヶ岳、三岳、東に雨石岳、櫃ヶ岳。山に挟まれた平地は、田植えの季節の田んぼが、水を張った白、すき返された茶色、まだ緑のままと、小さな四角のパッチワークだ。小田中の桜並木が一筋の縄のように見える。
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帰ってからホームページを再読していると、毘沙門洞というのが近くにあったらしい。毘沙門洞のある毘沙門山は雨石山に連なっている。もっとも、ホームページの作者は、通常言われている毘沙門山と雨石山は、地元で呼称されているのとは位置が違っていると主張している。この二つの山を登ることにした。
4月28日、173号線から八ヶ尾山と反対の方へ入り、毘沙門洞の案内板あるところから登り出す。参道になっているのかところどころに石段があるが荒れている。右側に毘沙門山の岩壁がそびえている。壁一面に、まだらになってツツジが咲いている。20分ほどで毘沙門洞に着く。洞は切妻屋根の内側のような形で、中は広い(高さ5m以上、奥行き10m以上とのこと)。南東に向かって開いている口から光がさしこみ明るかった。
洞の横からかすかな跡をたどってさらに登る(降りるときに分かったのだが、はっきりした道が洞をやや下ったところの分岐からついている)。この辺りはツツジが盛り。稜線に出て、小さなピークをいくつか越える。送電鉄塔を超えたところのピークに黄色い花が咲いていた。シャクナゲのようだ。その先のもう一つの送電鉄塔のあるピークを過ぎると、切れ落ちて高度感のある岩場があり、そこから頂上(630m)まで黄色い花のトンネルになっていた。狭い頂には松の木が一本あり、そこに毘沙門山と岩尾峰の二つの表示がかかっている。土地によってはここが雨石山とも呼ばれているらしい。洞から1時間ぐらいかかった。眺望はよい。
そこから岩峰を二つ越して傾斜の急な斜面を下ると、樹林の中のなだらかな稜線になる。雨石山(611m)は丘のようでどこが頂上だかはっきりしない。さらに先のピーク(595m)に行くが、いっそうあいまいな起伏である。その先は櫃ヶ岳に続いているが、そこで引き返した。
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毘沙門山・雨石山から帰って、この辺りの山の登行記のホームページをさらっていると、多紀アルプスでは「ヒカゲツツジ」が見られるとある。花は黄色い。では、毘沙門山に群生していたのはシャクナゲではなくツツジなのか。多紀アルプスと呼ばれているのは、東の櫃ヶ岳から西の三尾山にまでいたる連峰のことらしい。三尾山には登ったことがある。ガイドブックの三尾山の項を見てみると、「ヒカゲツツジ(キバナシャクナゲ)」とあった。
三尾山をインターネットで検索すると、黒頭峰と鋸山の名が出てくる。黒頭峰は三尾山の南にある山だ。一般的な地図には黒頭峰は載っているが三尾山はない。三角点が黒頭峰にあるからだ。ガイドブックでは三尾山が取り上げられることが多いのは、岩稜の山容と眺望のよさからだろう。黒頭峰はあまり面白くない山らしいが、隣の夏栗山と一緒に登っておこうと思った。
4月30日、黒頭峰、夏栗山を目指す。できれば鋸山も一緒に登ってしまいたかったが、例によって出かけるのが遅くなり、さらに登山口を見つけるのに手間取ってしまい、後日にまわすことにする。高蔵寺の前に車を停めたのが14時頃。一人の登山者が降りてきたので道を確かめる。山には誰もいなかったとのこと。日曜日なのに、よほど人気のない山だ。杉、松、雑木と林の中を登り、40分ほどで夏栗山。頂上には鉄製の展望台があり、南側の眺望が開けている。分岐まで戻り黒頭峰へ向かう。ここからの道は林の中のほぼ水平の尾根道で、ところどころ馬の背状になっている。感じのいい道だ。ちょっと分かりにくい分岐から直登。最初は杉林、やがて雑木になり、夏栗山から40分ほどで頂上。眺望は北方の一部だけで、三尾山が見えた。
車で帰るときに振り返ると、誰かがホームページで形容していたように、二つ並んだ山は乳房のよう。夏栗山への登りで見た黒頭峰はピラミダルな姿だったが、こっち(南方)からはその鋭さはない。この二つの山は篠山からも見えた。
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鋸山は三尾山の東にある。この山の名前を見て納得することがあった。丹波市春日町で175号線から分岐して栗柄峠へ向かうとき、右手に山が並んで険しい様相を見せている。この連山は低山ではあるが印象的で、一度行ったことがあるミルフォードトラックの峡谷を連想したほどである。手前の三尾山と向こう端の西ヶ岳・三岳の間をつないでいる小さなピークの連なりが鋸山なのだった。鋸山という名の山は方々にあるが、よくも名付けたと思う。
ホームページで情報を仕入れる。鋸山でもヒカゲツツジが見られるが、向山にはもっとたくさんあるという記載がある。向山を検索してみると、水分れ公園から登るらしい。水分れ公園には何回か行ったが、そういう山があるとは知らなかった。今年はまだ花があるだろう。向山にも登ることにしよう。
5月2日、連休の合間、天気がも一つである。篠山の辺りでは雨が降っていて、どうしようかと迷ったが、とにかく水分かれ公園まで行ってみる。雲は低く黒く、怪しい空模様だが、雨は降っていなかったので、10時半頃登り始める。ツツジとツバキの咲いている林の中の登り。向山はいくつかのピークが連なっている。四の山辺りからヒカゲツツジの群落が見られる。ヒカゲツツジは北斜面にツツジは南斜面に咲いている。ところどころヒカゲツツジのトンネル。花が落ち始めていて、地面にまだら模様を描いている。12時頃、向山三角点(569m)に着く。途中雨が降ったが、本格的にはならず、薄いガスに包まれている。先を急ぐ。珪石山で食事をすませ、清水山に回る。晴れて明るくなってきた。そこから下りになって、駐車場に戻ったのが14時頃。まだ時間があるので佐仲ダムへ行く。
ダム湖沿いに行くと「鏡峠・分水界の道」という案内標識があったので車を停めて登る(14時半)。幅の広い道だが、作った後放置されているようで荒れている。鏡峠よりも西の稜線に出た。道を右(西)にとり、小さなピークを超えて下ると、大きな岩の下を通る。岩の上方にヒカゲツツジが咲いているのが見える。急傾斜を登り、ピークを二つ超えると鋸山(605m)、15時半。ヒカゲツツジがたくさん。北方が見渡せる。西には三尾山、黒頭峰、夏栗山、東には西ヶ岳、三岳。もう一つ先のピークまで行ってから引き返す。鏡峠まで稜線をたどる。ツツジやツバキの咲くいい道である。鏡峠から佐仲湖へ下る道はひどく荒れていた。あまり人が通らないのか。17時頃車に戻る。
さて、あの辺りの山はだいたい登っただろうと、ホームページを読み返してみる。すると五台山から鷹取山、愛宕山、五大山へという縦走コースが出てきた。五台山は登ったことがあるが、こんなルートがあるとは知らなかった。何だかこわくなって、それ以上ホームページを見るのはやめた。