井本喬作品集

六月の夜

 僕は夜道を自転車で走っていた
Tシャツ一枚でも寒くなくなっていた
そして僕は生きようと思った

人生は耐えるべき時の経過ではなく自らの可能性を伸ばす機会だ
世界は「必然」の無関心さではなく僕自身を託す素地であり手段だ
僕が変われば全てが変わる それは意識の魔術

誰も僕を選びやしない
決意するのは僕なのだ
自らが何者かであるならば最初にそれに気づくのは自分自身なのだ

僕はこの気分を注意深く保存するために
力一杯自転車を漕ぎ
家へ帰った

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