二月の終りの夜
僕はもう冬には飽きてしまった。冬はその厳しさを失いかけ、だらだらといついているにすぎない。風が春をつげ、菜の花やたんぽぽ、れんげ、そして桜が咲き、散り、若葉となって、そう僕の待ち望んでいるのは夏。白い日差しが隈なく世界を満たし、街にはアイスクリームだのかき氷などが出回り、人々は汗みずくになって歩きながら海を想う。
だが、あせる必要は少しもない。時は過ぎゆく、確実にそしてす早く。もうすぐ僕はけだるい熱気の中で冬の寒さを憧れるようになるだろう。単純な循環。そして年をとる。
だから、もう失ったものを嘆くまい。君のさよならを、僕の青春を。
止まることのないものらを。