井本喬作品集

 本当に春が来たというのなら
何故こんなに空しいのだ
何故こんなに体がふるえ
涙さえ流れるのだ

桜の花は青空に映え
人々の流れは絶えることなく
陽の光は満ち

冬の間耐え忍び待っていたもの
やがてくる幸せのきざし
なつかしい暖かさ
それが今だというのに

だれもいない窓辺で
僕の聞いているのは風の感触
夢見る心静かな春の訪れ

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