写真
そのとき僕は待合室にいて
誰かの置き残した雑誌をめくっていた
その本には裸体や半裸体の娘の写真もあって
ちょっと興味をそそられたのさ
すると突然水着姿の君の写真が出てきた
よく調べてみるとそれは君ではない
彼女の他の写真は君と似てなどいない
けど、その一枚だけはまるで君だ
見れば見るほど君だった
僕はそっとそのページを破り たたんでポケットに入れた
依然として君は僕を支配しているようだ
以前図書館で他の娘を君と見間違ったとき
動悸が激しくなり胸が苦しくなって
そんな自分自身にびっくりしたんだが
うらみ、復讐心、冷淡であろうとする努力 ——— そんなものは君の姿を前にしたら全く無力なのさ
君は今どこにいるんだろう
会おうとは思わないけれど
僕の心は君の存在に反応するようにいつも身構えている
だから決して忘れられはしまい
何と因果なことだろう 情けない話さ
そうさ君の存在の与えてくれる喜びに比べれば
昨日今日の生活の実体など何の重みもないんだよ
そしてさっき僕はその写真を焼いた
君を忘れようとする努力だけはしておこうと思って‥‥‥