岬
岬への坂道を私は登って行く
林の中の細い道
突端にはたぶん白亜の燈台が立ち
はるか断崖の下を波が寄せ
みはるかす水平線、さえぎるもののない青い海
そうしていくつの岬を私は登っただろう
夏の日ざしの中を
秋の雨の中を
春の風の中を
冬の雲の下を
そうしていくつの海を私は眺めただろう
クラスの仲間達と
職場の同僚達と
心ひかれる娘達と
時には一人で
岬へ登る度に
人生は頁を重ね
人々は去り
時は過ぎて行く
待っているのはいつも同じ風景
どんづまりの地の突出と
虚しく開けた空と海
しかし私は岬への道を登り続ける
引き返す道とは知っていても
そこにあるのは古びた感嘆でしかなくとも
林の中の細い道を私は登り続ける