断想
帰宅のラッシュアワーの電車
私は扉の傍の壁によりかかり
車輌の後部を見ていた
電車はカーブする
電車はカーブする
窓の列が私の視界の真ん中にあって
右半分は乗客の横顔が並び
左半分は流れゆく風景
電車はカーブする
電車はカーブする
突然
くっつきあいながらお互いに無関心な顔々と
外の濃い緑の木々が
象徴的な様相を帯び
一枚のガラスに仕切られた
二つの世界の対照の異様さに気付いた
人間達は移動する小さな箱の中に自らを押し込め
着飾り、本を読み、イアホンを耳につけ、異性を気にしている‥‥
外の世界が見る者のない美しさで立ち
充足した豊かさでまわっているのを知らずに
そして私は
二つの世界の間で
一方に体を置き一方に心をよせ
ゆれ動いている
電車はカーブする
電車はカーブする