井本喬作品集

選択

 午前四時 僕は目が覚めた
眠れない
君のことを考える
僕はなぜこんなに冷静なのだろう
なぜあれほど大胆になれたのだろう
昔の僕は恋するのにうさぎのようにおびえていたのに

君は今眠っている
それとも 起きて僕のことを考えてくれているだろうか

僕は思う
君を求めてあてどもなく晩夏の街を歩きまわったことを
無駄かもしれないとそのとき思った
無駄でもかまわないと思い返した
それでも何の成果も得られず帰る道のみじめさ

それがむくわれたのだというふうには思わない
二つの線が交差するように僕は君に会ったのだ

これからどうなるか これからどうするか
そんなことに僕はまどわされない
今は僕は運命論者だ むろん強力な意志を備えた
僕のすることは決まっているのだ

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